「雑誌は心」


雑誌は心(スエイ)

 雑 昔、僕がやってた『MABO』っていう少女オカルト雑誌があったんだけど、全然売れなくてね。少女オカルト雑誌といっても、他に類似誌がないような雑誌だったから。強いて言えば占い雑誌みたいなものだったんだけど、もうちょっと宗教色が入ったような感じでさ、全然ダメだった。10万部出して9万部返ってきた。

 いつもね、雑誌を作るときに精神的なことを考えちゃうんですよ。この『MABO』のときも色々考えちゃって、女の人を買いかぶってたの(笑)。「少女っていう別の生き物がいる」って。そして、彼女たちは悩んでいるって。

 女の人には、少女期っていうのがあって、そのときの女の人は僕らとは、全然違う世界にいるみたいに思ってたのね。少女漫画の影響もあったんじゃないかな。だから、まあ、「悩める少女たちのための雑誌を作ろう」って思ってたけど。でも、実際はそうじゃなかった。あんまりオバサンも少女も変わらないんだよね(笑)。

 だいたい、本とか雑誌を読む人は、どっちかというと内向的な人でしょう。だから、どこか精神的なものがないと売れないんじゃないかと思っている。

 それは、パチンコ雑誌なんかの実用誌でもそうで、これは僕がパチンコにハマったから分かるんだけど、ものすごく孤独になるんだよね、パチンコやってると。たとえば、会社休んで一日中パチンコ打って、何万円か負けて、閉店の「螢の光」で店を出て、そのとき北風がピューッと吹いてたりすると、なんか社会に取り残されたような気分になって。「オレは今日何してたんだろう」って。話し相手もいないし。

 そういう人が缶コーヒー買おうと思ってコンビニに寄って、ふとパチンコ雑誌に目が止る。なんだかしらないけど、パチンコのことを一生懸命研究している人たちがいる。読者コーナーでは、毎日負けている人が何か書いている。オレだけじゃないんだ、明日は頑張ろう、みたいな。それで、その人はパチンコ雑誌を買って帰る。だから、コンビニに置けばパチンコ雑誌は絶対売れると思いましたね。

 それと、パチプロの故・田山幸憲さんと出会ったことも大きかったね。世の中には、いい人ゆえに社会から落ちこぼれてしまう人がいるって。会社に入って営業やらされても、人を騙すようなことが言えなくて落ちこぼれてしまう、そういう人がパチンコ屋にはいっぱいいるんじゃないかと思って。僕自身も社会に対して、どこかそういう気持ちを持ってたから、そういう人のためになるような雑誌を作りたい、という気持ちもあったわけ。

 エロ雑誌は、女の裸を前にすると、大学教授も、土方もみんな平等になるっていうのがあるんですよ。女の裸を見るとさ、みんな「おっ!」と同じレベルになるでしょう、それが面白かった(笑)。そういうものってほかにないでしょう。

 僕はまともにエロ雑誌作る気はなかったけど、エロを利用して別なことをやろうと思ってたんです。難しいことを書いていても、きわどいヌードがあれば売れるし。いまはそうは行かないけど。まぁ、人の弱味に付け込むというか(笑)。

 僕はマーケティングみたいなものを信用していないところがあるんですよ。単にマーケティングしてね、「これこれこうやれば、売れますから、こういう雑誌を作りましょう」なんて言ってもさ、面白くないですよ、そんなもの。男性誌で、よくあるじゃない? 中高年の男性が理想とするような「別荘持って、蕎麦喰って、時計は何がいい」とかそういう雑誌。「男の桃源郷マガジン」って呼ぶらしいんだけど、それは1誌あればいいわけだから、それが売れたからって、よそが真似して作ってもしょうがないと思うんだよね。

 マーケティングっていうのは、要は政治でしょう。大衆を調査して、大衆が受け入れる商品を売るという。それはあらかじめ売れることがわかることだから、面白くないし、別に編集者の仕事じゃないような気がするんだよね。編集ってさ、僕はクリエイティブなことだと思ってるから。

 確かに今はね、全部マーケティングになってるから、クリエイティブなもの、理屈じゃないものっていうのは出すのが難しいから、マーケティングやったように見せかけないとダメなんだけど、そういうフリをして企画会議を説得させればいいんじゃないですか。

 その雑誌を読んでみんなが元気になれるとか、気持ちが楽になるとか、そういうものが作れるといいと思いますね。


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