東京パチンカー&スロッター


 2000年頃僕が関わっていた『東京パチンカー&スロッター』という雑誌でやった田山幸憲さん(故人)とスエイさんの対談の原稿が出てきました。
 田山さんはスエイさんの話に度々出てくる伝説のパチプロで、多くのパチンカーに影響を及ぼした方です。田山さんとスエイさんの対談としては最後のインタビュー、是非お読みください。(マツダ)


池袋の夢

末井 一番愛着がある町はやっぱり池袋でしょ?

田山 まぁね。用賀もいい場所だけれども愛着となると全然違う。やっぱり池袋だね。

末井 長かったから?

田山 うん。いまだに夢をみるんだけど、背景は必ず池袋なんだよ。俺、用賀に越してから7年になるけどね、用賀は夢に出てこないの。

末井 どんな夢を見てるの?

田山 背景はやっぱり池袋の西口周辺が多いけどね。

末井 キャバレーとか?

田山 キャバレーは出てこない(笑)。俺、池袋には40年間くらい住んでたわけだよ。だから、あの辺のパチンコ屋が出てくるんだと思う。

末井 パチンコ打ってるシーンが出てくるの?

田山 いや、そういう夢は見ないね。いつも、さまよってる夢を見るの。「台がない」とか「ツリ忘れた」とかね(笑)。「台がない」っていうのが多いなぁ。

末井 打つまで至らない(笑)。

田山 うん。パチンコ打ちたいんだけど、パチンコ屋の中に台がないんだよね。

末井 設置されてないっていうこと?

田山 うん。探してもないんだよ。

末井 (笑)。

田山 変なパチスロみたいなのばっかりでね。年中そんな夢を見るね。いつも「パチンコがない」っていう夢。

末井 なんか、危機感があるってことなのかな?

田山 わからないなぁ。

 

池袋、昭和45年

末井 俺も看板を描いてた頃に池袋にいたけど、田山さんがいた頃と同じ頃だと思う。

田山 色んな奴がいたね。今でもそうだけど、なんかゴチャゴチャした街だよね。

末井 俺がいたのは昭和45年くらいかな。

田山 じゃあ、俺はまだパチプロになってないね。パチプロになる3年くらい前(笑)。

末井 そんなわけないでしょ。

田山 いや、俺が高校卒業したのが40年だから。(末井さんが看板描きしてる頃は)もうバイトしてるときだね。バイトしたりパチンコやったりして遊んでるとき。

末井 俺は当時、「クラウン」っていうピンクサロンの看板を、その店の地下で描いてたわけ。田山さんの文庫にも書いたけど、俺が上を睨みながら「みんなぶっ壊れてしまえ」と思って地下でセッセと看板を描いてるときに、田山さんは上でホステスとバカ騒ぎしてたんだ、と思う。だいたい時期が一緒だから(笑)。

田山 でも、「クラウン」は2〜3回しか行ってないよ。あの頃はやっぱり「ハワイ」じゃない?「ハワイ」は一番凄かったよ。4号店まであってさ。

--半径300mくらいで、二人が、同じ日の同じ時間にいた可能性もあるわけですね。

田山 そうそう。あるあるある。

末井 俺、あの頃のロマンス通りの看板、3軒くらい描いてたからね。「クラウン」の前の「キューピッド」っていう店は行った?

田山 うん。ピンサロみたいの。行った行った。

末井 あそこの看板も僕が描いてたから(笑)。「クラウン」の地下で描いて「キューピッド」に持っていってたの(笑)。

田山 ブサイクな女の子がいたな。真っ黒でね。

末井 歯がない女の子とかね。

田山 それも夢に出てくるよ。

一同 爆笑

田山 でも、夢っていうのは面白いよな。小説読んでる時にさ、こう無意識のうちに背景とか頭の中で描いてるだろ。それって夢と同じ構造だと思うよ。

 

池袋西口

末井 やっぱり池袋って言ったら、西口。

田山 あの街は掃きだめ的な。なんていうのかなぁ……庶民的というかなんというか。コレ(頬に傷のポーズ)も多いしさ。

末井 変な怪しさありますよね。今は少し変わったけど、三業地ってあったじゃない? 昔は凄かったんだよねぇ、あそこは。

田山 あと、百軒店っていうのが中にあってさ。売春宿なんだけど、あれはずいぶん前からあったよ。区画整理される前までずっとあったね。

末井 変な狭いアパートがあって、そこにフィリピン人が住んでてね。「山楽」よりもっと田端方面に行ったほう。アパートでやってるんですよ、売春を。

田山 飲み屋が(売春を)あっせんするんだよね。赤い電球がついててさ。

末井 ソープはね、俺、池袋が最初だったの。それもさ、白夜の社員旅行で伊香保温泉に行った帰りにソープランド(笑)。しかもね、うちに持って帰るお土産を、ソープランド行ってソープ嬢に上げちゃったんだよね(笑)。

一同 爆笑

田山 あのあたりは東南アジアとか色んな奴がいるじゃない? それに比べると用賀なんて上品な街だよね。悪い奴なんていねぇよ。ちょっと物足りないよ、俺(笑)。新しいくせにズルい奴とか、そういうのはよくいるんだけど。

末井 俺も桜新町に来て最初はね、なんかちょっと抵抗はあったんだけど。中産階級っぽいじゃない? でも最近は凄くいいなぁ、と思うね。

田山 いいでしょ。静かだしね。

末井 緑が多いしね、花がいっぱい咲いてる。

田山 ほとんど物音がしないじゃない。

末井 うん。でも、池袋が懐かしくなったりすることはないの?

田山 もう、それを通り越しちゃった。最初に越した頃は、懐かしくてしょうがなかったけどね。

末井 田山さんの本読んでると、パチンコは一人で打ってるけど、「懐かしい」っていうのは人なんだよね。人間が懐かしい。

田山 うん。同じ所にずっといると必ず仲間はできるんだよ。それは、決して悪いことじゃないよね。パチンコが終わった後に一杯飲んでさ。麻雀行ってバカやって。いいんだよ。あまり度が過ぎちゃうとマズいんだよね。年中になっちゃうと、マズいんだけどな。

羽根モノ時代

末井 昔の「山楽」は良かったね。あの地下は懐かしいよね。オバチャンがいてさ。あの雰囲気はいいよ。

田山 羽根モノ時代だよ。

末井 今、もし、前のまま残ってたら羽根モノ打ちたい?

田山 そうね。しかし、羽根モノなんか、今の店は相手にしてないんじゃないの? だって今は羽根モノ置いてない店ばっかだもん。

--今、そういう反動で秘かなブームになってるのが「珍古台」。情報交換しながら、「まだあそこに残ってた」とか言って打ちにいく人達がいるみたいです。

末井 高円寺にもまだあるよ、ビッグシューター。

--ギャンブルっていうところ以外で、パチンコを打つマニアも時代とともに増えてきたっていうのもありますね。

末井 羽根モノが置いてあったら打ちに行きたくなるなぁ。

田山 しかし、パチンコ屋にしたらデジパチのほうが儲かるんだろうね。パチンコ屋は、味をしめたらデジパチばっかり置くよ。

末井 田山さんは、池袋で打ってた頃の最後のほうで一発台に行ったんだっけ?

田山 最後じゃなくて、途中だよね。ジェットライン。ジェットラインは途中で無くなっちゃったの。禁止になったじゃない? ジェットライン、ジャスティーとかああいう台は。末井さんと会った頃にちょうどジェットラインをやってたんじゃないかな。

末井 いやローリングマシーンじゃないの? だって最初はね、ロボQだもん。「山楽」に3台か4台くらいしかなかったという。

--必勝ガイドの1号目では、ロボQがむちゃくちゃデカい扱いでしたよね。

田山 あの頃、俺がロボQって言ったのに、末井さんはロボスキーって書いたんだよ。「何考えてんのかな」って思った(笑)。

末井 え、そうだっけ? 俺がロボスキー好きだったから、そう書いちゃったのかな。ロボスキーは良かったね。出玉多くて。

田山 あの頃の羽根モノが一番いいよね。

末井 中でもローリングマシーンは一番の傑作だよね。

田山 そうね。子供をあやすオモチャみたいな音でさ。

末井 あれがまた、子供に帰ったような気持ちになるんだよね。「ガランガラン」っていうガラガラの音で。音楽もいいんだけど、「山楽」のローリングマシーンの役モノが凄かったね、ステージがかなり傾いちゃってる。凄いんだよ、こんな傾いちゃってるの(笑)。

田山 最初は、水平なんだけど、だんだん傾いてくる。

末井 羽根モノって、ずっと打ってるとだんだんガタが来るよね、それによって微妙に台選びの判断基準は変化してくるの?

田山 まぁ、変わってくることもあるかな。今まで調子よかった台も、急に悪くなったりすることもあるからね。釘のせいじゃないんだよ。「どこの釘がどう」じゃない。もう、どうしてこうなったんだ、っていうね。

末井 「山楽」で印象に残ってた台は、今でも覚えてる?

田山 ローリングマシーンだとね、何番だっけなぁ。5台くらいあったんだよね。役モノの柱通っても、絶対無理っていうのがあったり。ビッグシューターの役モノに玉が妙に溜まっちゃう台とか。

末井 釘の開け閉めとかも思い出せるの?

田山 いや、さすがに釘は忘れちゃうよ。でも、置いてあった場所は覚えてるね。

末井 あとは、あの頃はレーシングか。

田山 あの台は、あんまり役モノに左右されない台だったね。

末井 あの頃、打ってたときの心理状態ってどんな感じ? 例えば、今のパチスロなんかだと開店回りして「金を稼ぐ」というイメージだけど、あの頃は「楽しむ」っていうのもあったんじゃないかな。

田山 うん。でも、俺はあの頃、いつも堅く稼ごうと思ってた。例えば、今1万円勝ってるときにね、この後注ぎ込んで、1万の勝ちが2万の勝ちになるのか、可能性が五分五分ならやんない。そこでヤメ。「パチプロ日記1」の頃だね。今は、遊びたいから可能性が二分でもやってるけどね(笑)。そのときは、どうしても稼ぎたかったから。今ね、新台が出ると、みんな行き過ぎちゃうんだけど、本当に金がなかったらやらないよね。だから、みんな金持ちなんだよ。

末井 でも、1時や2時で終わりにしてたでしょ? そのあとはどうしてたの?

田山 飲んでたの。池袋で。昼間から飲めるから。

末井 俺もよく昼間飲みに行ったよ。酔っぱらうんだよね、これがまた(笑)。

田山 そういうのが周りにいたら、そのパターンになっちゃうよね。夕方4時頃まで飲んで帰るの。それで、家へ帰ってまず寝る。それで、8時頃目が覚めて……という生活。

 

ネグラがえ

末井 田山さんが池袋から用賀に越してから、結構ネグラがえやってるじゃない? 新しい店はどうやって決めるの? 

田山 俺はね、ほとんどパチンコ屋を知らないからさ。引っ越して最初のネグラは溝口だったんだけど、あれは自分で歩いて探した。8軒くらいあたって。理由はね、ただ羽根モノがいっぱいあったから。その次の桜新町は、ノッポとかが先に行ってたからね。その次の青葉台もノッポが行ってたから。その次の用賀は自分の家に近かったから(笑)。

末井 単純な理由。

田山 「出る」とか「出ない」とかあんまり考えてない。どうにかなるだろう、と。

末井 でも、そういう風に探しても、トータルすると勝ってるんだから凄いよね。

田山 勝たなきゃしょうがないでしょ。俺っていつもね、ネグラがえした最初の頃は凄い勝ってるんだよ。それから段々ダメになってくる。

末井 なんで(笑)?

田山 う〜ん。

末井 説明できない。

田山 慎重じゃなくなるのかも。

末井 でも、同じ店に通ってると、なんとなく勝つ 確率が上がるような感じがするよね。

田山 俺はずっとそういう感じでさ、台のクセとか釘のクセとかそういう細かいところで。その点はいいんだよね。

末井 俺も向ヶ丘遊園では、結構勝ってた。あそこはまぁ、思い出のね(笑)。前の実家。実家というか(笑)。

田山 前のカミさんどうしたの?

末井 わかんない(笑)。だって、何も連絡しないからさ。

田山 まぁ、元気でやってるんじゃないの。

末井 たまにね、行ってみようかなぁ、と思ってね、近くまで行くんだけど、スリルがあるわけよ。「ひょっとして会うんじゃないか」とかね(笑)。たまたまね、区役所に用事があったりして行くんだけど、前の実家がその区役所に近いから、ドキドキして面白いね(笑)。会いたいような会いたくないような。

田山 いや、会いたくはない(でしょう)(笑)。

末井 会うとマズいな、と思う。だから、「もし向こうから来たら、どこへ逃げよう」とかさ(笑)。

田山 パチンコ屋で会ったりしたらどうする?

末井 えっ!? パチンコ屋で(笑)。それはないと思う。前の奥さん、パチンコやらないから。

−−田山さんの場合、街を移って、一番気にすることって打つ場所ですよね? 

田山 うん。

−−それと、飲み屋ですよね?

田山 それは後からくることだから(笑)。最初から決めないよ、そんなこと。そんなことは、どうにかなるんだよ。

末井 飲み屋はどこでもあるもんね(笑)。地方の郊外店なんかをネグラにすると困るだろうけど。

田山 溝口にいたときさ、「飲み屋ないかなぁ」と思ってたら、パチンコ屋の隣が飲み屋だったんだよね(笑)。

一同 爆笑

田山 青葉台でもね、パチンコ終わった後にさ、近くの飲み屋に行ったんだよ。やっぱり雰囲気違うね。溝口と青葉台じゃね、飲み屋に入っても全然違う。なんかわざとらしいんだよね。新興都市だから、店が綺麗すぎちゃうんだよね。パチンコ屋も飲み屋も綺麗で。

末井 全部新品なんだよね。池袋の対極だよね。


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